夏月夜十景 第七景

タイトルのことを少し。

夏と月を入れたタイトルにしたいと思っていました。

劇中の佐々木喜善の津波の話、ドラマの「二十六夜待」どちらも「夏の月」が共通していることからなのですが、あれこれ思いを巡らせていると、以前上演したお芝居で「トーキョーJCT(ジャンクション)」というタイトルをつけたことがありなかなか響きも良かったので、では「トーキョーMoon」はどうかと思いましたが、夏がどこかに消えてしまっていることに少し後で気づきました。

ならばと思い直したもののすぐに違うタイトルが浮かんでくるはずもなく「夏」「月」というワードで検索して遊んでいたらこんな俳句がヒットしました。

『蛸壺や はかなき夢を 夏の月』

「蛸壺」と「夏の月」かあ、とその組み合わせの唐突さに首をひねりながら作者はとみればなんと芭蕉でした。

とはいえ、句をいくら見つめても何も情景が見えてきません、謎解きのような思いで解説を読むと、この句は芭蕉が明石、須磨に宿泊した時に読んだ句だと書かれていました。

あ、それでタコなのか、蛸壺なのねと、なるほどなるほど、え、でも「はかなき夢を」ってなんのこと?と、一向によくわかりません。
するとお隣のサイトでこれは源平の一谷の合戦に想いを馳せ、蛸壺の中のタコが明日の我が身も知らずに眠っている姿に平家の姿を重ね合わせてもいるのであるよ、と解説がなされていて、ああ、そうか、それはかなりはかないなあ、そうか、平家とタコと鵯越かあ、すごいなあ、芭蕉と感心することしきりでした。

でも、だからって『蛸壺と夏と月』なんてタイトルは許されないし、どうしようか、でも、いいなあ、夏と月とさらに思いを深め、あれこれ思いを巡らせましたが蛸壺に匹敵するような言葉が埼玉在住の旅はおろかリモート仕事のため滅多に外出もしないような凡夫に見つかるはずもなく…。

まあ、じゃあ、蛸壺も含めて夏の月が照らし出すいろんな光景でいいじゃないかということからこちらのタイトルに軟着陸したのでした。

あまり由来の話にもなっていませんし、なんだかパクリと妥協の産物なのかもしれません、いえ、きっとそうです。でもここだけの話、少し気に入ってもいるのです。
今週末より開演です。お待ちしております。

しかし「ピクシブ百科事典」なぜほぼ同じ説明を二度繰り返すのか…。

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