祝、日本被団協ノーベル平和賞受賞!
2019年冬、愛媛県の捕縛者団体「愛媛県原爆被害者の会」から朗読劇の執筆依頼を受けて、原爆を題材にした朗読劇『夏を歩く』は生まれました。
こうしたご縁を改めて感謝するとともに受賞を心より祝福させていただきます、本当におめでとうございました。
朗読劇『夏を歩く』は当初の予定では2020年夏、戦後75周年を記念して松山キャメリアホールで上演の予定でしたが、新型コロナ感染症対策により2度、3度と順延を繰り返し、結局観客を前にしての上演は叶わず、2021年夏に東京での収録映像を松山へ配信するという形になってしまいました。
恥ずかしながら私はこの依頼を通して初めて原爆について学び始め、実際に被爆者の方々とお会いしたのですが、それ以前から被爆者の方々が報復の思いに支配されなかったこと、そして辛い過去と向き合い『二度と同じことを繰り返さぬために』と、なぜ未来へ向けての証言活動を半世紀以上にわたって続けることができたのかが大きな疑問としてありました。
そんな疑問を抱えながら上演のレセプション出席のため初めて松山へ伺った時に、たしか牧師さんか教師の方だったかと思いますが、その方が同じことを被爆者の方に質問したのです。
その質問に被爆者の方は『さあ、なしてやったかねえ、もう覚えておらんわ』と同席されたお仲間を見ながら笑い合っていました。
それは質問に対してのある種の照れのようなものだったのかもしれませんが、そのなんとも穏やかな笑いに私は、個人の痛みや憎しみを「当たり前のこと」として受け止める集団に対しての安心感と、会員同士の信頼感から生まれたものを感じ、こうした結びつきが活動の原点なのかしらと思いました。
運動を持続しながら個人の思いを支え得る集団。
孤立と分断が今や「当たり前のこと」となってしまった現代に、それがいかに貴重で尊いものなのかを今改めて感じています。
長年にわたって、組織をまとめ運営されてきた会員の方々の努力に敬意をいだくと共に、今回の受賞を心からお喜び申し上げます。本当におめでとうございました。
今回の受賞は核兵器使用の危険が高まっていることの裏返しでもあるでしょう。
そうした中で今後『核兵器禁止条約』がますますクローズアップされるはずです。
『核兵器禁止条約』とはそもそもは大国の核の実験場として国土を利用され続けてきた南太平洋の諸国の環境汚染への危惧と怒り、そして平和への祈念が結実した条約でもあります。
アメリカの「核の傘」に収まり、条約に対して批判的な姿勢を取り続ける日本政府がどういう動きを見せるかに世界の注目はこれまで以上に高まるでことしょう。
個人的には祈りにも似た気持ちで見続けてゆこうと思っています。
これを機に、上演は叶わないかもしれない拙作『夏を歩く』にまつわるあれこれを少しずつ発信をしていきたいと思いますので、よかったら今後もお付き合いください。