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明治末期から昭和の初めにかけて、⽂壇や出版界、さらに演劇界や花柳界を中⼼に、都内各所でたびたび開かれていたという怪談会や百物語。
その会の主催にたびたび名を連ねた都新聞(現:東京新聞)記者、平⼭蘆江氏の怪談⼩説と会の断⽚とを組み合わせ、ドラマアンソロジーとして再構築。現代にも通じる哀切な物語を朗読劇として上演します。

出演者情報を公開、順次更新してまいります。
出演者には自身の経験した「怖い話」と所属、今後の予定を聞いております。
※全て原文ママ

◇板倉佳司
所属:フリー
怖い話:昔、劇団のハザマにコンビニ雇われ店長のバイトをしていた時のこと。
日課のタバコ自販機の補充をしていると。
後ろにベージュの作業服を着た常連のおじさんの気配。
「あ、すいませんどーぞー!」と振り向くと…誰もいない。
あれ?疲れてるな俺、と。で又タバコ補充作業。
するとやっぱりさっきのおじさんが小銭握って待っている姿が横目に入る。
「あ、すみま…せ…」…いない。
店内に戻ってバイトの女の子にこの話をしたところ…。
「あ、あの道路工事のおじさん、3〜4日前にすぐそこの現場で、車が突っ込んで。電柱に挟まれて亡くなったんですよ。」
「まだ気がついてないんですよ、自分が亡くなったこと…かわいそう」…背筋がゾワり。目からは涙が溢れておりました。

◇萩原玲子
所属:フリー
怖い話:初めて見たのは小学校1年の誕生日前。
家の前の道路で遊んでいたらお空にぽっかりおばあちゃんの姿が。すぐ後に亡くなったとの電話が入った。享年55歳と言うのも今思うと恐ろしい。

◇新上貴美
所属:演劇集団 円
怖い話:ある日帰宅すると窓際に飾っていた花が茎だけの姿に。
すぐに貴重品の無事を確認して、確信しました。
その後すぐに対処し平和に暮らしていた2年後の深夜、寝ていると耳元に違和感を覚え触ってみると微かに血が。幸い大事にはならず速攻で引っ越しました。(令和のドラえもん事件)



◇高橋未央
所属:劇団 文化座
怖い話:子供の頃のはなし。
祖母のお家にとまると必ず泊まる6畳和室部屋。祖父の戦死した弟さんの写真が飾ってあり、昼間は全然きにならないのに、夜真っ暗なかで見る写真はとても不気味で、怖いせいか口が動いてるような、目が動いているようなきがしてきて、更にねられなくなったことをよく覚えている。



◇斎藤萌子
所属:エムズクルー
怖い話:数年前、明治41年竣工という重要文化財の洋風建築の美術館で働いていた時に一度だけ。ある夜人気のない通用口の番をしていたところ、誰もいないのに突然自動ドアが開きました。真っ暗な外の闇から人気のないガランとした建物に風が吹きこみ、ゾワゾワゾワっとしました。これまで聞かされてきた博物館や美術館の怪談の数々の足元にも及ばない話ですが、「やっぱりあるんだ」と妙に納得した経験でした。

◇田村僚佑
所属:B-Box(ビーボックス)
怖い話:大学生時代、朝に洗面所から『ガシャーン!』と大きな音が。何かと思って見てみたら、洗面台にかけてあったドライヤーが何かの弾みで落ちてしまっていました。
講義に遅刻しそうだったのでそのままにして家を出ました。講義が終わり、サークル活動をして、友達とご飯を食べて帰宅。
シャワーを浴びて洗面台にかけてあるドライヤーで髪を乾かしてその日は就寝しました。
今後の予定:8/19〜26 TEAM RevArt第10回公演『モノクロノタネ』出演予定。
その他、アニメや吹き替え等出演予定あり。詳しくはX(旧Twitter @tmr_ryo)にて。

◇今井聡
所属:フリー
怖い話:タイに行った時、現地コーディネーターがキレイなお姉さん達が接客してくれるお店に連れていってくれました。タイ語はわかりませんが熱烈な接客をしてくれるお姉さんたちでした。楽しく飲んだ帰り道コーディネーターの人が言いました。「あのお姉さん達は皆股間にイチモツある人たちだよ、、、」
怖い話がなかなか思いあたりませんで、、、これって怖い話になりますか?、、、

ロシアのウクライナ侵攻を機に再演を決定。
AFF2助成応募により事業認可決定を受けてのツアー公演となった。
主演は愛媛への収録映像配信と長崎公演に続き田中健。
前年の長崎公演では朗読劇と講談という組み合わせだったが、ツアーでは訪問先の地元劇団に地元の戦争の話を伝える朗読劇の上演を依頼、エムズクルーと地元劇団の朗読劇二本立て上演とした。

□12月9・10日 松山公演 @シアターねこ
 松山参加劇団/劇団U Z 朗読劇:原民喜と幻の少女

□12月12・13日 宮崎公演 @宮崎キネマ館
 宮崎参加劇団/どらまさるく 朗読劇:「五月の空」 演出:黒木朋子

□12月17・18日 臼杵公演 @臼杵久家の大蔵 
 臼杵参加劇団/劇団 ムジカ ライブペインティングとアーサー・ビナード作の絵本朗読
 演出:梶原涼晴

□12月26日 東京公演 @中目黒キンケロシアター
 東京のみ参加/講談「ヒカリサス」

出演/田中健
斎藤萌子〈エムズクルー〉 高橋未央〈劇団 文化座/臼杵、宮崎、東京〉 高橋真悠
高橋和久(臼杵、東京) 平田三奈子〈劇団 黒テント/東京〉 
南英二(松山・宮崎)
パーカッション演奏/平野勲人(松山、宮崎、臼杵) 鈴木賢治(東京)
講談/神田陽乃丸(東京)

美術:尾谷由衣
証明・映像操作・舞台監督:市川貴光

2020年の終戦75周年のため「愛媛原爆被害者の会」より原爆についての朗読劇創作と上演依頼を受け、松山コミュニティセンター(キャメリアホール)上演を前提に創作を開始するも新型コロナの感染症対策のため、順延を繰り返した結果、松山での公演は中止、東京からの収録映像配信という結果となった。それでも3ヶ月後の12月には「長崎原爆資料館」というメモリアルな場所での上演が実現した。
当初は朗読劇で原爆の実相を伝え、シンポジウムで核兵器の現在を伝えるという二本立ての企画であったが、シンポジウムよりも講談でそれを伝えられないかとの提案が実現。
朗読劇「夏を歩く」と講談「ヒカリサス」の二本立ての公演となった。

朗読劇「夏を歩く」 作・演出/南英二
俳優K(田中健)は被爆二世で先ごろ亡くなった女友達から古ぼけた「原民喜全集」を遺品としてもらい受け、その奥付に広島市立中央図書館の蔵書印があるのを見つけた。
KはMの死により原民喜「夏の花」で主人公である作家自身が辿った避難経路を実際に訪ねてみたくなり全集の返却を自身への口実に広島行きを決意。
「原爆」というものを改めて自分のものとして感じたくなったのだと語る。
荷物をロッカーに預け、シェアサイクルで広島の街を巡りながら随所で当時の街の声を聞くのだった。
街の声、それは「夏の花」に描かれた言葉や、「第一県女」の女生徒たちが残した日記や証言など様々な記録であり、Kが街角に立つ度にその記憶に呼び起こされ、当時の原爆の実相が語られていく。
ラストは犠牲となった「第一県女」の女生徒の遺影が投影される中、音楽の教師をしていたという彼女の父親が作曲した曲がKによりケーナで演奏され静かに幕を閉じる。

主演/田中健
出演/斎藤萌子〈エムズクルー〉、平田三奈子〈劇団黒テント〉 高橋真悠、高橋和久
パーカッション演奏/平野勲人

新作講談「ヒカリサス」 作・演出/南英二
通称「フランク・レポート」と呼ばれるマンハッタン計画に参加した科学者たちが政府に原爆の投下中止の嘆願書を提出したことがあったという事実に基づく架空の対話から物語は始まる。
核兵器使用前夜から冷戦時の核兵器開発競争を経て、核兵器の実験場とされた南太平洋諸国が提案した「核兵器禁止条約」の採択に至る核兵器をめぐる世界情勢とその道のりを、絵本「スイミー」をモチーフにパーカッションのリズムに乗せテンポよく語っていく。
講談/神田陽菜(神田陽子病欠のため弟子の現:神田陽乃丸が代役)

2019年「江戸まち たいとう芸楽祭」参加作品『七月の客人』制作の亀和夫氏がプロデュースした映画『祈り』―幻に長崎を想う刻―のタイアップ企画として上演が決定。
当初は2021年1月上演予定であったが、新型コロナ感染対策のため10月に順延となった。

保存から一転、取り壊しが決まった浦上の魂とも言うべく浦上天主堂跡から、バラバラに崩れ落ちた聖母マリア像を自分たちの身近に供え、犠牲者への祈りを日々新たにするために盗み出すことを決意した女性たちをめぐる物語。

戦後十余年、復興の足音が響く中、未だ原爆の後遺症に苦しむ者、原爆を政治活動に利用しようとする者、原爆の戦禍の中で自分を辱め、今はヤクザ者となった男に復讐をしようとする者など原爆によって人生を変えられた人々の心の機微を細かにそして大胆に描いた。昭和34年初演の劇作家、田中千禾夫氏が故郷の痛みに寄り添った魂の一作。
犠牲になった者たちを新たにコロスとして登場させての上演とした。

美術:尾谷由衣 
照明:竹内右史 
音楽:越阪部智彦 
舞台監督:市川貴光 
衣装:萩原玲子
宣伝美術:村中誠
舞台写真:BOZZO
制作:(株)ファミリーアーツ

出演/那須野恵 新上貴美〈演劇集団 円〉 斎藤萌子〈エムズクルー〉 高橋未央〈劇団文化座〉 小川沙織〈劇団文化座〉 箕輪菜穂江 おのるみ 
島村勝 菊地真之 吉田道広 今井聡 青木隼 大森寛人 石井智也 近童弐吉

出演/廣田行生(演劇集団 円)松本舞(仕事)斎藤萌子 豊富満 尾𥔎彰雄 青木隼 平田三奈子(劇団 黒テント)山田真央 佐野裕也 戸上未勇
羽迫瑠里(小松芳アラビア舞踊団/ベリーダンス)
鈴木賢治(パーカッション演奏)
芸楽祭ボランティアのみなさん/台東区にゆかりのエキストラ出演のみなさん
大上こうじ(お笑い浅草21世紀/ゲスト出演) 
田中純(江戸糸あやつり人形/特別出演)

美術:寺岡崇
照明・音響:松田充博
舞台監督:村井重樹
宣伝美術:大沼修一

1989年、当時南英二主宰していた「東京ルナパーク」によって上演された作品が、その後、戯曲として初めて2005年毎日新聞社主催「モノノケ文学賞」優秀賞受賞となる。過去に何度か異なる団体によって舞台化が試みられたものの実現には至らず、エムズクルー が台東区主催「第1回 江戸まち たいとう芸楽祭」参加にちなみ、浅草から物語が始まるこの作品の上演がようやく実現した。

糸あやつり人形とのコラボをメインに据え、猥雑で活気に満ちた懐かしい浅草の雰囲気を伝えながら、現在浅草で活動する軽演劇劇団座長の出演や、妖艶なベリーダンスなども取り混ぜて劇を盛り上げながら、誰の中にもある永遠の夏「心の中の少年」との別れを描いていく。
巌谷小波「平太郎化物日記」原案の作品。

昭和初期の東京。少年雑誌の新人女性記者「稲生ミチヨ」は夏休み特集記事の取材のため、地方の有名な化け物屋敷に泊まり込み、その毎日を日記にすることを命じられる。
ひと夏を作り物の少年「稲生平太郎」として過ごす彼女の心の変化を語る。

人形師の操る永遠の少年『稲生平太郎』、兜を被った編集長の化け物、見世物小屋の呼び込み衆によく似た化け物たち、和服にパラソルをさした村の優しいご婦人、そして劇の進行切り盛りする華やかな女性講談師など多彩な登場人物が真冬の劇場を沸かせた。

出演/斎藤萌子 尾崎彰雄 逢川大樹 井上新也 佐藤美佐子 宮﨑優里 萩原玲子 原元太仁

主人公は義父からのD Vと夫の無関心さに耐えかね着の身着のままで家を飛び出した女性。彼女が通うクリニックのカウンセリングルームで語るのは『西遊記の帰りの旅』という目的を失い役割と効率と責任しか重要視されない世界。
その世界と現実世界とを行き来しながら、一見無関係に見える様々な事実が荷札を貼られた貨物のように続々と集積地へと集まってくる様を短いシーンを積み重ね活写した。

独身となった主人公はその孤独からS N Sを通してあるトラックドライバーと知り合い一緒に暮らす約束を残したまま行方不明となる。
以降、彼のもとに住所の書かれていない彼女からのものと思われる荷物が毎日のように届き部屋は占拠される。思い余ったドライバーは裏路地の私立探偵に捜索を依頼する。
一方、私立探偵の元カノで情報屋の女は探偵と過去に接触のあった反社会勢力のフロント企業に接近する。
そのまた一方で、主人公自身にはなんの興味も示さない夫は、彼女が持ち出したある荷物を取り戻すためカウンセリングルームに忍び込む。
同じ頃フロント企業幹部は会社の危機を救うためトラックドライバーに借金の肩代わりにある危険な輸送仕事を依頼する。そして情報屋はその仕事の重要な最後の1ピースとして主人公の元夫に接触するのだった。

すべての事柄が時間経過とともに関係を深め、渦を巻きながら超大型台風上陸の日に路上で大激突する。
ドラレコ映像を段ボールを積み上げたスクリーンに投影し、爆音のDJミックスが響く中、台風の中心へ爆走する『ドミノ倒し』的展開のノンストップストーリー。

出演/斎藤萌子 平田三奈子(劇団 黒テント) 宮﨑優里 青木隼 大山大仙 来栖梨紗 いまい彩乃 原元太仁 松本舞(映像出演)

舞台監督:渡辺岳彦

“シェアハウス三部作”の三作目。
新郎新婦と同じシェアハウスで、第二の青春時代とでもいうべき一時期を過ごしながらある出来事が原因で離れ離れになってしまっていた仲間たちが、披露宴出席のため久しぶりに集まることになったことから始まる青春群像劇。
披露宴の司会者は仲人でもあるシェアハウスの元管理人。席上、新郎新婦発案の[出席者が一緒に暮らした頃の新婦の日記を朗読する]というアトラクションが行われる。
朗読される日記を通して、当時は知ることのできなかった事実や人間関係、そしてゲームの本当の目的である離散の原因となった出来事の真相を、過去と現在を行き来しながら見つめなおしていくという構成。最後の謎解きを披露宴欠席となった仲間の一人がビデオメッセージで行うという趣向が用意された。
日記を読むものは披露宴出席のフォーマルな衣装、回想に登場するものは背中にシェアハウス名の羊という文字のロゴが入ったTシャツ姿で時間を可視化し、美術はテーブル席と椅子を組み合わせ、空間全体を披露宴会場に見立てた。

出演/石本径代 菅野久夫 斎藤萌子 新野美知(劇団 昴)平田美奈子(劇団 黒テント)
 細谷奈央 祭美和 鈴木賢治(パーカッション演奏)

前年に『死神』と二本立てで上演された『すだま』を、男性キャスト一人を加えて再上演。
2017年日本演出者協会「新人演出家コンクール 一次映像審査」通過作品。

書下ろし小説『死神』と、その続編で震災とその後の一か月間の「あたし」を描く『すだま』とをパーカッションの生演奏で二作連続で上演した。
小説スタイルで書かれた二つの一人芝居をそれぞれ6人の女優で演じ、心理描写から地の文、動物の声までを台詞として担うのは当然として、舞台装置転換も出演者自らが行い、さらには照明操作さえも出演者が舞台上で操作し、すべてを舞台上で完結させるという、演劇の虚構性をはぎとる演出方法を試した。

『すだま』
『死神』の追跡から無事、逃れることのできた「あたし」は職場で知り合った彼氏と同棲をはじめ、今は引っ越し屋のアルバイトに励んでいた。
そして迎えた東日本大震災。以来、部屋に帰るといつも震災のニュースを伝えるテレビ画面を食い入るように見つめていた「あの人」が、一通の書き置きを残して姿を消した。
前後して実家の母親からは父親がいなくなったとの知らせが入り、父の生まれ故郷京都での捜索を依頼されるが、生返事で実家をあたとにした。
ひとまずは父の失踪よりも「あたし」は、「あの人」のいなくなった朝、「大丈夫?」と意味ありげなメールを送ってきた二人の共通の知り合いでもある男を呼び出すことをまずは優先。
弱みを見せないようにかいつまんで事情を話すと男は訳知り顔に「あいつは京都にいるみたいだね」と微笑む。
なぜそんなことを知っているのか、そもそも「あの人」といつと話をしたのか、それともそれはただのハッタリなのか、男の態度に苛立ちを覚えながら「あたし」は男の「過去の秘密」を武器にあの手この手で粘り強く追い詰めると、男は渋々自分の勤務先の携帯ショップで「あたし」が「あの人」へプレゼントのため購入したiPhoneを利用し「iPhoneを探す」の機能を使って「あの人」の行先を突き止めたのだとiPhoneの画面を「あたし」に差し出すのだった。
理解を超えたもはや犯罪一歩手前の許し難い覗き見趣味。
「あたし」は男の手からiPhoneをむしりとり、画面を覗き込むと京都の地図の上に「あの人」のいる位置をリアルタイムで知らせる赤いドットからソナーのような青い波紋が輪を広げているのを確認、「あたし」はその場で母親に電話をし父の捜索を引き受け、捜査経費と交通費をゲット。こうして「あたし」は「あの人」と自分の父親を探すべく、父の故郷であり「あたし」が浪人時代と学生時代合わせて6年間を過ごした京都の街へ夜行バス「ドリーム号」へ乗り込み旅立つのだった。
京都をイメージした舞台美術の中、地名や店の名称など固有名詞をふんだんにちりばめながらシェアサイクルで疾走する「あたし」のディテクティブストーリー。

出演/井上新也・尾﨑彰雄・駒木崇宏(焼きうどん)
   松本舞・佐藤美佐子・孫貞子(死神)

第4回公演『LOVE6(sicks) -6つの通わない愛の断片-』に収めた短編『永遠の焼きうどん』と、坂後昇(当時は阪後昇)の書下ろし一人称小説『死神』、それぞれ一人芝居として書かれた作品を男性3人組、女性3人組とが、それぞれに上演するという試み。

『死神』
シェアハウスに暮らす主人公は派遣現場を渡り歩くワーカホリックな「あたし」。
ある夜「あたし」はソウルメイトの曜子さんに『あなたの背中からは黒いコンセントのコードのようなものが伸びていて、それを辿って『死神』が刻々と近づいてきている。死神から身を守る方法は一つだけ、交通機関を細かく乗り継ぎ、『死神』との距離と時間をできるだけ稼ぐことだ』と告げられる。
その日から「あたし」の文字通り「命がけ」の逃亡生活が始まる。
眠らない死神から時間を稼ぐには立ち止まることのない移動の連続と、可能な限り直通ルートを避ける曲芸のような交通機関の乗り継ぎ、市街地では複雑な迷路のようなルートを優先して選択する、そんな微に入り細を穿つような逃亡ルートの計画立案とその実行に驚くことに「あたし」の毎日は充実し、「生きがい」さえ感じるようになるのだった。
こうした努力のおかげで『死神』との間に「一週間」という差を開けることに成功したある日、「あたし」は余裕からまれた慢心と持ち前の好奇心から『死神』を一目見てみたいという激しい欲求に駆られる。そして接近遭遇現場を1週間前に自身が立ち寄った、北区十条駅前の大衆酒場と定め、開店直後の狭い店内で『死神』の姿をこっそり目撃した「あたし」はなんと『死神』に特別な感情を抱いてしまうことになるのだった。
溢れ出す気持ちを抑え乗り込んだ下り電車で「あたし」は自身の気持ちを持て余し、自らの過ごしてきた時間を振り返りながら夜通し電車に揺られ、たどり着いた日本海の見える小さな町で『死神』のやってくるのを静かに待つことを決意。駅に降り立ち駅前の不動産屋で小さなアパートを借り「愛する人」を出迎えることを夢に見ながら死神との距離「一週間」を一人過ごすのだった。

各地を猛烈なスピードで疾走するロードムービーにも似た逃走劇。
「あたし」を複数人で演じるスタイルをベースに、演じる人数を変えながら台詞劇として、ドラマリーディングとしての上演を繰り返し、4年後「九州編」を書き下ろすことにもなり九州大分で地元NPOとの協働によるリーディング公演も実現。

出演/板倉佳司 中村ノゾム 原千果子 小長谷勝彦 斎藤萌子 尾崎彰雄 渡邊亮

◇映像と距離とタクシードライバー ◇
藤沢周の小説『箱崎ジャンクション』から着想を得た二人のタクシードライバーの物語。
『都タクシ』ーのドライバー「カワカミ」はある思いを実現するため、一度客として乗車したことのある『光タクシ』ードライバー「ムロタ」に「1日だけ俺があんたの会社の車に乗り、あんたが俺のクラウンに乗る、売り上げは全部あんたにやるよ、どうだ、引き受けてくれないか」と申し出る。「ムロタ」は最初拒否するものの、ある計画を思いつき「カワカミ」の申し出を引き受ける。
雇用問題や人生相談などの時事問題を車内に流れるラジオ番組として併走させた。
また技術面では舞台上での演技に、舞台の一角で行われる演技の映像中継が交錯し、緊張した関係性のドラマを際立たせた。 またラストシーンはこれまでのエムズクルーとは異なる趣向で、大きな反響と好評を得た。エムズクルー のエポックとなった作品。

出演板倉佳司・原田紀行(reset-N)・斎藤萌子・松井裕子・黒川龍市・野田美華・銀座吟八・松原寛ほか

映像との新たな融合を目指した再演。前回テキストと並行して「不在であるもの」の日記という新たな視点を加えて上演。CGや文字テロップを大胆に取り入れ、「現代演劇」へというタームを強く意識した作品となった。

出演/板倉佳司 野水佐記子 原田紀行(reset-N) 斎藤萌子 三澤真弓 大島克哉 南英司
◇彷徨◇
色川武大の『狂人日記』をモチーフに、精神を病み、彷徨を余儀なくされた男とそれに付き添う女、そしてそれをとりまく家族を描いた。
また同時に兄弟愛も大きな物語の柱となった。近隣の悪意で退去を余儀なくされること数回、兄に寄り添い面倒を見続けた弟が、彼の恋人の今は空き家となった実家に兄を引き取ったその日、使い物にならない風呂がガマの修理をしながら、そばに捨てられたゴルフクラブを握りしめ、一点を見つめ『なんで壊れたものばっかり俺に押し付けるんだ、なんで兄貴になんか生まれてきたんだ…』と思いつめ呟く姿が印象に残る。

出演/板倉佳司 牧野くみこ(東京シェイクスピア・カンパニー)  斎藤萌子 百瀬洋一郎
福田祐一郎 黒岩俊光 飛鳥悠子 紅林尚樹 小野早苗 川口リエ

再演。斜面にへばりつくように建つ高原の別荘の中二階で繰り広げられる群像劇。
死に寄り添う空白と不在を描いた作品。
前回とは違うラストシーンに書き換え、舞台美術も斜めに立つ別荘を意識し開帳場とした。

出演/斎藤萌子 山岡弘征 村山雄一 坪内守 渡辺大滋 豊島侑也 高岡季里子 高向弥生 井上新也 石出勇騎 佐藤美佐子
◇死体のない殺人事件◇
「不在」をテーマにした『みずうみ』シリーズ2作目。
湖底が繋がっていて決して増水することのない二つの湖のある町を舞台とした作品。
第7回公演『みずうみ』姉妹作。

旧家の先代の死去に伴う相続争い「死体のない不確かな殺人事件」と、先代が興した土木事務所の若者達の屈折、旧家をめぐるもう一つの物語とが交錯する。
地方都市の因習や結論ありきの体質を「湖底が繋がり決して増水することのない二つの湖」という地形に托し意味を含ませた。

出演/鈴木実 斎藤萌子 高松直輝 藤居千美 黒川琉壱 横瀬祥子 伊藤努膝 膝井瑞紀(ヒザイミズキ) 百瀬洋一郎 岩橋毬 大島克哉 木下かれん 南英司

エムズクルー再演年間の第二弾。ワークショップを開催し、キャスティングを行い、出演者の個性に合わせて、より人物描写を深めた。

出演/斎藤萌子 伊藤聖子 松原智規 三浦秀典 鈴木実 岩石理恵

エムズクルー初の再演。新たな舞台装置で「温室」感を表現。
6人の登場人物が複雑に交錯するドラマの背景を、より「大きなもの」、社会や経済に置き、ラストシーンは前回の甘美な雰囲気から、厳しい現実と破綻を象徴するシャープな終焉へと手直しされた。

出演/伊藤聖子 斎藤萌子 黒川琉壱 橋本利明 江口ヒロミ 鶴見英之 加藤裕人(劇団 男魂) 榎杏子 渋谷雄樹 高島一恵 川野弘毅
◇今考える「戦争」◇
ピランデルロ『未知の女』をモチーフにした物語と、時間も場所も知れない港町のホテルで記憶を失った泊まり客達、そして死んだ兵士と恋人との再会の時間が交錯する。
「戦争とは個人の物語、一人の死の物語」エムズクルーの考える、今を生きる反戦の新しい語り口を模索した作品。

出演/森山太・斎藤萌子・鶴見英之・伊藤聖子・榎杏子・黒川琉壱
◇映画『シナのルーレット』◇
岸田國士の戯曲『温室の前』の兄妹に着想を得、土地買収とマンション建設による環境問題とを絡め現代的に再構築した作品。弱さと生命力、近種配合の象徴である蘭と、R・V・ファスビンダー監督の『シナのルーレット』をモチーフにした。 

『シナのルーレット』とは参加者にある人物の印象を答えさせ、それが誰を指しているかを参加者同士が推理しあうという心理ゲームで、必ず全員が心の裏側をさらけだす結果となる。
※この公演より完全プロデュース公演形式に移行するとともに、表記をM’s Crewからエムズクルーへと改称した。

出演/湯浅和也 阿部伸勝 鶴見英之 松原寛 南英司 井上新也 三澤真弓 阿部由輝子 舟川亜希 勝沼三月花 安食真由美 小笠原大(青☆組)
◇捏造と殺人◇
ある湖畔の町に建つ売却が決まった「蒼のホテル」と東京湾岸にあるバー「アズール」。 同じ建築家による同じ構造を持つ2つの空間と時間を行き来しながら、 姉の不倫相手を殺し都内から湖のある町へ逃亡した青年と、未成年者との買春疑惑を密告され職を追われた高校教師とが湖畔のホテルのバーで遭遇する。
復讐と自らの潔白の証明のために、青年をかばい、過去をねつ造しようとする元教師。
彼から逃れようとするほどに事態は青年と周囲を巻き込み、取り返しのつかない事態へと転落してゆく。

湖畔のホテルと、東京湾岸のバー、同じ風景の中の異なる時間を描いた逃げ場のない殺人劇。

出演/三浦清光 舟川亜希 鶴見英之 井上新也 湯浅和也 三澤真弓 関根好香 緒川貴恵 小村哲 南英司ほか
◇不確かな一夜の群像劇◇
一人の女性のある行動を巡って、周囲の者達のさまざまに異なる受け止め方を通し、日常の不確かさを描いた群像劇。

ミラン・クンデラの短編小説「シンポジウム(『微笑を誘う愛の物語』収蔵)」を換骨奪胎、ある地方都市の閉院した古いクリニックを舞台に“自治体主催の文化際でフリーマーケットを行った町内会グループの打ち上げの席”という設定に置き換えて上演。

虚言癖のある若い女性が泥酔し、彼女に好意を寄せるバイト先の店長、彼女との「ワンナイト」をもくろむフリマ出店業者、そして彼女が好意を寄せる同年代の男性を巻き込み、フリマ売れ残り品が部屋中にぶちまけられてしまうほどの騒動を起こした末、捨て台詞を残し彼女は屋敷の部屋へ逃げこんでしまう。
騒動の余韻が収まった頃、参加者の一人がガスの匂いに気づき、部屋のドアを開くと彼女は意識を失って倒れており、そのまま病院に運ばれてしまう。
部屋ではガスコンロにやかんがかけっぱなしになったままで、自殺を図ったのか、それとも単に火の消し忘れによるやかんのお湯の吹きこぼれなのか。誰も帰ることができないまま夜は更けてゆく。
「事件」は常に舞台の外で起き、残された者は筋書きを知らされずにいつ来るとも知れない出番を楽屋でただ待ち続ける俳優に見立てて描いた。

出演/飯田千賀 松井裕子 井上新也 三浦秀典 三澤真弓 湯浅和也 三浦清光 松原寛 南英司 斎藤萌子
◇アングラ少女漫画劇◇
川上弘美『いとしい』をモチーフに、昭和50年代、海に落ちかかった水辺の町の大衆食堂を舞台に、二人の姉妹の愛が水のように淀みうねりそしてゆっくりと海へ流れる出る物語。

ある日突然一人で自分の繭に閉じこもってしまった「姉」の夫、引越しを重ね定住を嫌う露天商の恋人を持つ「妹」、姉妹の母親の恋人だった料理上手な元画家、「妹」の恋人「兄」を慕う女子高生で「妹」の教え子でもある「兄」の「妹」、その女子高生の「妹」に付き纏うストーカーじみた男子生徒、駆け落ち訳ありの二人組、どこででもいきなり眠ってしまうナルコレプシーの客、そして繭に閉じこもった「姉」の夫の代わりに現れた夫そっくりのよく喋る「カゲ」。
一癖も二癖もある人物たちが大衆食堂を舞台に繰り広げるひと夏の恋愛模様。

出演/井上新也+市毛綾子 又吉健介+阿部由輝子 三浦清光 小野瀬誠+三澤真弓
南英司+吉田美穂 石川洋行+風間美保子
◇性愛についての連作短編集◇
タイトルの示す通り、“愛の病”をテーマに人の孤独や存在のはかなさを見つめよう6つ(six=sicks)の短編からなる小公演。どの劇も登場人物は二人、もしくは一人。

出演/三浦清光 松井裕子 三浦秀典 三澤真弓 葛城七穂 今津光 松原寛 飯村朝子 井上新也 市毛綾子
◇退屈と青春◇
濃霧に閉ざされた高原の別荘地。ホスト役の青年が、遺書めいた手紙を残して失踪。
そこに招かれ、そして取り残された者たちが、青年の帰りを待ち続ける、退屈と怠惰、そして孤独を描いた青春群像劇。
タイトルは谷川俊太郎氏の詩からお借りした。

出演/三浦清光 笠原竜司 南英司 上岡小百合 黒瀬倫代 松井裕子 川渕美華 三澤真弓
◇異なる場所で同じ時間を過ごす友人たちのある一日◇
舞台にスペース全体を占めるほどの長く大きなテーブルを置き、今は会うことのなくなった人たちの異なる場所での同じ時間を切り取り「私が遠く離れた誰かのことを思っている時、その相手は、『私が今思っている』ということが分かることはないのだろうか…」というチェーホフの問いかけをテーマとしながらそれぞれの1日を映像も交えて上演した。

出演/藤野晃 松井裕子 三浦清光 土井きよ美 廣澤信満 川渕美華 井上新也 小野瀬誠 大島克哉 三澤真弓 福井淑恵
少年少女たち:本庄美峰 福田友佳利 平塚吉宣 蛭田一史 又吉健介 幅口怜尚
◇M’s Crewの表記でスタートした第1作

◇反転するリアル◇
故郷の森で、私有地の境界線を巡って始まった視察が案内人の昏倒により現在地を見失い、迷子となってしまう。
帰るべき道を無くしてしまった9人の彷徨は、疑惑が諍いを生み、過去の秘密は暴露され、裏切りと疑心暗鬼で極限状態へと達した大詰めに思いがけない結末を迎える。
「不思議の国のアリス」の後日譚ともいえる作品。
舞台に砂と土を敷き詰めての上演だったが、舞い上がった土埃で劇場のエアコンが目詰まりを起こし、劇場へ謝罪する事態となった。

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